【徹底比較】変額保険のパフォーマンスを検証
こんにちは。なにわらいふです。
最近、保険の窓口販売で保険と投資を一緒にした『変額保険』の商品販売が増えていますね。
一方で、消費者からの相談件数が多いのもこの保険です。
私も2019年にこの商品の勧誘を受け、実際に加入しました。
加入後、勉強を続けた結果、この商品のコストパフォーマンスのあまりの悪さに解約を行いました。
また低解約返戻金という解約を渋らせるための戦略にもはまっていたため、実質60万円ほどを失うこととなりました。
この記事では変額保険の概要と、その仕組み、そして保険と投資を分けた場合の試算を行います。
- 変額保険の仕組みについて
- 具体的なシミュレーション結果
- 変額保険 VS 投資+掛捨保険のパフォーマンス比較
▼Contents
変額保険とは
変額保険とは、保険料の一部を投資に振り向け、そのお金で運用を行い、将来の保険金や満期保険金の金額が変動する保険です。
基本的な仕組みは生命保険の中の養老保険と同じですが、いろいろと毛が生えたような仕組みになっています。変額保険のポイントを挙げると以下のようになります。
- 契約期間中に死亡した場合、必ず定額もしくはそれ以上の保険金が受け取れる。
- 契約満期になれば、満期保険金が受け取れる。
- 満期保険金は金額が変動する。(元本割れとなる可能性もある)
一番のポイントは、『満期保険金が元本割れする可能性がある』という点です。
しかし、こうならないようにしっかりと保険金を運用していきましょう。というスタンスの保険になります。ここでは有期型について解説します。
変額保険の仕組みを図で解説
仮に、死亡保障4000万円の契約をしたとすると…
- 契約から満期まで、死亡した場合は最低4000万円受け取れる。
- 死亡したときに運用好調かつその金額が4000万円を超えていた場合、4000万円以上受け取れる
- 満期まで運用不調で満期の時に4000万円以下の実績だった場合、4000万円以下しか受け取れない
- 契約から10年間は運用絶好調でも解約時にほぼお金が戻らない。
この保険は、2年や5年といった短期間で解約されることを阻止するために、「契約後10年未満で解約した場合は相応の費用をもらいます」という「解約控除」がついています。
この解約控除があるために、変額保険に加入した後、解約するのを渋る人が非常に多いと思います。
実態は『保険』+『投資』の商品
この変額保険は死亡に備える『生命保険』としての役割と、積み立ててお金を増やす『投資』という二つの側面を併せ持った商品となっています。
ということは、老後資金および死亡に備えるお金として変額保険で備える以外にも、「掛け捨て生命保険」と「自分で投資信託を行う」という方法でも備えることができます。
その前に…私は変額保険へ加入する際にFPより以下のように勧められました。
『月々の支払いが非常に大きいので、10年間の払い済みとして将来に備えましょう。10念年間支払えば老後の不安は解消されます』
これは10年間で保険料の払い込みを終了し「払済保険」へ変更するというプランとなります。イメージは以下の図のようになります。
上記の手法でお金を備えていく場合と、自分で掛け捨て生命保険+投資信託で備える場合のシミュレーション結果をお話しします。
払済保険でのシミュレーション
私が契約していた変額保険の加入条件とそのシミュレーション結果は以下の通りです。
- 基本保険金4000万円
- 満期80歳
- 契約時年齢:25歳
- 保険料:42,400円/月
- 10年間で払済保険とする予定とする
払い込み保険料の合計
加入から、10年間の払い込み保険料合計…\42,400×12×10=\5,088,000
です。私が勧められたのは508万円を10年間で支払った後に払い済みとするプランでした。
10年後(払い済み後)の保険金と解約返戻金
契約後から10年間の運用成績を年率-3%、0%、3%、6%としたときの保険金金額と解約時の返戻金です。
返戻金の横のパーセンテージは支払った保険料に対しての返戻金の割合です。
運用利率 (10年間) | -3% | 0% | +3% | +6% |
返戻金 (解約時にもらえる) | 293万円(57.7%) | 341万円(67.0%) | 397万円(78.0%) | 464万円(91.3%) |
保険金 (死亡時もらえる) | 819万円 | 952万円 | 1,108万円 | 1,296万円 |
10年間かけて508万円も保険料を払ったのにも関わらず、6%で運用できていたとしても508万円は解約時にもらえません。
契約から20年後(払込10年+払済期間10年)
運用利率 | -3% | 0% | +3% | +6% |
返戻金 (解約時にもらえる) | 197万円(38.7%) | 315万円(62.0%) | 499万円(98.0%) | 786万円(154.5%) |
保険金 (死亡時もらえる) | 819万円 | 952万円 | 1,108万円 | 1,296万円 |
運用成績が0%の場合であれば、何もせずとも返戻金は減っていきます。すなわち返戻金を増やすためにはプラスの成績を出し続ける必要があります。
契約から30年後~
運用利率 | -3% | 0% | +3% | +6% |
30年後返戻金 | 121万円(23.8%) | 283万円(55.6%) | 627万円(123.2%) | 1,364万円(268.1%) |
40年後返戻金 | 57万円(11.2%) | 239万円(47.0%) | 784万円(154.1%) | 2,408万円(473.3%) |
50年後返戻金 | 0万円(0%) | 184万円(36.1%) | 978万円(192.3%) | 4,277万円(840.7%) |
55年後返戻金 | 0万円(0%) | 163万円(32.0%) | 1,108万円(217.8%) | 5,709万円(1122%) |
55年後には悲惨な結果となっています。500万円若い時にお金を出したけれども、55年後には3%運用でもたった2倍にしか増えていません。絶望です。
比較する数値は55年後で年率6%で運用できた時の返戻金とします。508万円→5,709万円です。
掛捨生命保険+投資と比較
それでは、掛け捨て生命保険と投資信託で比較した場合をシミュレーションしてみます。この時、投資においては複利の効果を織り込むものとします。
- 死亡保険4000万円(25歳~35歳)
- 死亡保険1300万円(35歳~55歳)
- ※55歳以降は死亡時には遺族は投資金融資産のみ受け取れることとします
- 契約時年齢:25歳
- 保険料:3,022円/月(25歳~35歳)※ネット保険を参考
- 保険料:1,716円/月(35歳~45歳)
- 保険料:3,602円/月(45歳~55歳)
- 10年間で払済保険とする予定とする
- 払済後の基本保険金は1300万円
上記条件をもとに、契約後から10年間は・・・
保険料3,022円+投資39,378円を毎月支払うものとします。
10年後の金融資産
年利率6%、積み立て10年、毎月39,378円積み立てると、10年後には
6,453,163円となります。(月複利)【課税考慮:606万円】
この時点で、変額保険との差は645万円-464万円=181万円となります。
この差額181万円を10年間で割ると、月々約1万5千円分がその他の経費となっていることとなります。
20年後の金融資産
10年後以降は投資信託への支払いはやめて、積み立て続けた金額を置いておくこととします。
一方で死亡保険を1300万円と設定して毎月1,716円を積み立てたお金から支払うこととします。
結果、20年後には1140万円となります。【課税考慮:951万円】
30年後~55年後の金融資産
30年後・・・2,004万円【課税考慮:1,477万円】
40年後・・・3,629万円【課税考慮:2,381万円】
50年後・・・6,603万円【課税考慮:3,837万円】
55年後・・・8,907万円【課税考慮:4,870万円】
55年後には、その差額が3,198万円に広がります。この差額を55年間平均すると月々約4万8千円を手数料として支払っていることとなります。
ここでの課税考慮は55年後まで毎月利益確定売りを行ったとした場合の仮定です。
実際こんなことを行う長期目線投資家はいないと思いますが、毎月毎月売買を繰り返し課税され続けると変額保険よりも資産は少ない額となってしまいます。
まとめ 保険や投資は目的を明確にして加入を判断しよう
- 変額保険の仕組みについて
- 具体的なシミュレーション結果
- 変額保険 VS 投資+掛捨保険のパフォーマンス比較
10年後は181万円、20年後は354万円、55年後には3,198万円の差があることを確認しました。この差額は生命保険会社の維持に使われる費用でもなく、投資に回る費用でもなく、極端に言うと様々な手数料と保険販売人の報酬となります。
- 55年間で3,198万円も受け取る金額に差が出るけどかまわない!
- 月々1万5千円をブラックボックスの手数料に支払う!
- 面倒なことをこの金額で任せる!
という判断をされるのであれば変額保険に加入する価値はあるかもしれません。
資産運用の観点から見ると、変額保険は全く持ってパフォーマンスの悪い商品となります。
保険は保険、投資は投資。分けて考えることが非常に重要です。